コラム

就業規則の閲覧について使用者の義務と労働者の権利を解説

貴社では、従業員の方が自由に就業規則を見ることができるでしょうか? 例えば入社時にはプリントして渡したとしても、その後、原本はどこにあるのか、どうやって見るのかなどを説明しておかないと、知らず知らずのうちに法律に違反している可能性があります。

今回は就業規則の概要から周知の義務、正しく周知するためにはどうすればよいかなどを解説していきます。


就業規則とは

就業規則とは、従業員(労働者)の給与や労働時間といった労働条件、従業員として守るべき社内のルールや罰則などをまとめた規則です。従業員を常時10人以上雇用している企業には、就業規則の作成と労働基準監督署への届け出が義務づけられています(労働基準法 第89条)。このため厚生労働省では、「モデル就業規則」を作成し、ホームページでこれを公開しています。

モデル就業規則は英語、中国語、ポルトガル語、ベトナム語でも作られ、多様化する労働の状況に合わせて就業規則を作成できるように工夫されています。

このような就業規則は、法律によって作成・届け出が義務づけられていますが、本来は何のために作られるのでしょうか?

就業規則を作る目的

就業規則は、主に以下のような目的のために作られます。

・企業内の秩序を保つ
大勢の人たちが働く企業内では、決められたルールを守ることが秩序の維持につながります。就業規則は企業側が従業員に明確に示し、誰もがいつでも内容を閲覧できる環境にしておくことが大切です。

・トラブルの防止
ルールの順守は社内外のトラブル防止につながります。正しい規則を示し罰則を明確にしておくことで、不正行為やルールから逸脱した行為の抑止になります。また、近年ではハラスメントに対する対応も慎重に行わねばなりません。企業内でのハラスメント(セクハラやパワハラ)に関わるガイドラインなども明示しておく必要があります。

・企業の利益を守る
ルールを守らないことによる業務効率の低下や、社外とのトラブルは企業利益の損失となります。正しい業務手順を示し法律違反や情報漏えいを防止することで、企業の利益は守られます。

・企業としての責任を果たす
企業は、さまざまな人たち(または組織)との共生関係で成り立っています。こうした人や組織をステークホルダーといい、具体的には「顧客」、「従業員」、「取引先」、「地域」を指します。これらのステークホルダーと良好な関係を保つためには、利益の追求だけでなく社会的責任(CSR)も果たす必要があります。環境問題や人権問題への対応を企業として進めていくためには、就業規則や社内規程にもこれらを明示しておかねばなりません。



就業規則の閲覧は自由にできる?

では、企業が作成した就業規則は、企業側の許可なく閲覧できるのでしょうか?

就業規則は本来、閲覧を許可されるような性質のものではありません。許可を得るまでもなく、従業員であれば誰でも、いつでも閲覧できます。それどころか、企業(使用者)は従業員がいつでも就業規則を見られるようにせねばならず(労働基準法 第106条1項)、その義務を怠った場合には法律の定めにより罰せられることもあるのです。

就業規則には、従業員が守らねばならない業務に関する規則や社内秩序を保つための決まり事も記載されていますが、他にも労働時間や労働の内容など、労働者にとって大切な労働条件が記載されています(給与規程として別に用意されている場合もあります)。労働者には、それらの労働条件や給与規程が勝手に変えられていないか、見て確認する権利もあるのです。また使用者には、就業規則を作成したときと同様に、変更した場合も変更後の就業規則について周知する義務があります。



従業員から就業規則の閲覧を求められたら?

従業員から就業規則の閲覧について求められたら、企業側はどのように対処すればよいのでしょうか? 

就業規則について労働基準法では、「確認できる場所に掲示」、「書面で交付」、「データで共有」のいずれかの方法で周知することが定められています。従業員から就業規則の閲覧を求められるまでもなく、企業側はいずれかの方法で就業規則を閲覧できる環境に置かなければなりません。ただし、これらの方法にはメリットとデメリットがあります。

確認できる場所に掲示

従業員がいつでも見られるように社内の特定の場所に常時掲示するか、プリントした就業規則を机や書棚などに置いておく方法です。メリットはコストをかけることなく従業員に就業規則を周知できることですが、事業所が分かれていたり、社内でも建屋が分かれていたりする場合などは管理が煩雑になります。中でも一番大変なのは、改訂があった場合のバージョン管理です。就業規則が複数箇所に分かれて置かれていると、改訂のたびに確実に最新の就業規則に交換しなければなりません。

書面で交付

就業規則を印刷し、一人ひとりの従業員に配布するやり方です。従業員全員に就業規則の周知を徹底できることはメリットですが、この方法も改訂があった場合にバージョン管理が大変になること(確実に渡したか、受け取ったかなど)と、印刷や配布にコストと時間がかかるのがデメリットです。他にも深刻なデメリットには、セキュリティの問題があります。個人に就業規則を配布してしまえば、社外に持ち出されてしまう危険性があります。またコピーも容易にできてしまうので、情報漏えいの危険性が高くなります。

データで共有

社内のファイルサーバーやグループウエアで、電子的に情報を共有する方法です。従業員全員が見ることのできる社内のポータルサイトやファイルサーバーに就業規則を置いておけば、本社から遠い地方の支店や海外からも容易に就業規則を閲覧できます。また、グループウエアに用意されていることの多いアーカイブや共有データエリアに置いておくことも同様の効果があります。データで就業規則を閲覧できるようにする一番のメリットは、データ(就業規則)の一元管理ができることです。紙の掲示や配布と違って、1カ所に置いてあるファイルを管理すればよいので、改訂があった場合でも確実に変更を反映することができます。またプリントアウトやコピーの記録を含む制限をかけておけば、セキュリティの強度も上がります。この方法のデメリットは、「編集権限を持ったユーザーが誤って、もしくは悪意をもってファイルの編集や削除などを実行してしまい、復元できない」といった事故の可能性があることです。

こうした事故の予防も含め、就業規則のデータ管理には、規程管理システムが最適です。
弊社の提供する規程管理システム「DocLAN(ドックラン)」でならば、以下のようなメリットがあります。

・クラウドでシステムを運用するので、いつでもどこからでも、在宅勤務でも就業規則を閲覧可能
・高いセキュリティ性
・規程の登録、改訂、廃棄を一元管理。バージョン管理も容易
・クラウドなので導入までの期間が短く、迅速な運用開始が可能
・必要な機能を標準装備。無駄なコストを抑制



まとめ:従業員は就業規則を自由に閲覧する権利がある

使用者による就業規則の周知が義務づけられているということは、逆に言えば従業員は就業規則を自由に見る権利があるということです。使用者は、従業員がいつでもどこからでも就業規則を見られるよう、閲覧できる状態を常に整えておかねばなりません。就業規則を掲示したり印刷したりする方法もありますが、効率良く一元管理し、かつ規則を見やすい環境に置くためには規程管理システムの導入をお勧めします。


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社内インタビュー

2022.12.15

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