コラム

就業規則のトラブルにならない変更方法と注意すべきポイント

就業規則を作成してから長い時間がたてば、社会の状況や経営環境に応じて変更が必要になる場合もあるでしょう。就業規則の変更は禁止されているわけではありませんが、問題はその手順と内容です。特に従業員が不利になる変更をする場合には、労使双方の話し合いと合意が何より大事です。

今回は就業規則変更のための手続きや注意すべきポイントについて解説していきます。


就業規則を変更する理由とは?

就業規則変更の理由を確認する前に、就業規則を簡単に理解しておきましょう。

就業規則とは

就業規則は、就業規程や社内規程とも呼ばれる企業が定めた社内のルールです。
従業員を常時10人以上雇用している企業は、就業規則の作成と労働基準監督署への届け出が義務付けられています(労働基準法 第89条)。就業規則は社内の秩序を維持し、企業と従業員、または従業員同士のトラブルを防止するために作成されます。また法律や政令に応じたルールや罰則を定めることで、不正行為の発生を防止し企業の利益を守ります。

就業規則の変更

就業規則は一度決めたからといって永続的に同じ内容のまま運用されるわけではなく、さまざまな理由で変更されます。企業が就業規則を変更する理由の多くは、冒頭でも書いたように社会状況や経営環境の変化によるものです。社会状況の変化とは社会通念の変化もありますが、そのほとんどは法律や政令などの改正です。また就業規則は、経営環境および経営状態の変化でも変更されることがあります。

法律の場合は労働基準法の改正や労働関係の法令改正が理由となっている場合が多く、経営環境および経営状態の変化は企業の合併や組織変更、経営状態の悪化などが理由です。企業合併が行われた場合には両社の給与や待遇の差を埋める必要があり、経営状態悪化の場合は労働時間や各種手当、給与を含む待遇の変更が必要になる場合があるのです。



就業規則を変更するために必要な手続きは?

就業規則の変更は、企業が勝手に行うことはできません。就業規則は、その作成と労働基準監督署への届け出が義務付けられていると書きましたが、変更の場合も同様に労働基準監督署へ届け出なくてはなりません。また、就業規則制定・変更の場合には「就業規則(変更)届」と「意見書」を提出しなければなりません。

意見書とは?

就業規則の意見書とは、就業規則の内容に対して労働者(従業員)の代表から意見を聴取し、意見をまとめた書類のことです。

労働者の代表とは、労働者の過半数で組織する労働組合の長か、組合がなければ民主的に選ばれた労働者の過半数を代表する者、と定められています。経営者に近い立場で業務を行う者(例えば管理職や経営陣に近い役職者)は、選出されたとしてもこの代表する者にはなれません。また、労働者とは正規従業員に限らず、同じ事業所で働く契約社員やパート・アルバイトのような非正規雇用の従業員も含まれます。

意見書は、これらの従業員から選挙のような民主的な方法で選ばれた人間の意見をまとめたものになります。意見書を就業規則の新規届け出や変更の際に添付しなければならない理由は、企業が勝手に労働者に不利なルールを作成したり、変更したりするようなことのないようにするためなのです。意見書には労働者代表の就業規則に対する意見が記載され、日付と代表者の署名・押印が入れられます。

就業規則の変更手続き

具体的には、就業規則は以下のような手順で変更されることがほとんどです。

①経営者の承認
変更の内容が法律や政令の変更によるものであれ、合併や経営環境の変化によるものであれ、就業規則の変更については、まず経営者の承認を得る必要があります。労働基準監督署に提出する就業規則(変更)届は、企業として提出する書類になるためです。

②労使の合意
就業規則(変更)届と同時に提出する意見書は、提出前に労使がその内容につき合意している必要があります。

③労働基準監督署長への届け出
労働基準監督署長宛てに就業規則(変更)届と、合意した意見書を提出します。

④変更の内容を従業員全員に周知
書類が労働基準監督署に受理されたら、変更が完了した報告とあらためて就業規則の変更内容を従業員全員に周知する必要があります。企業は労働者がいつでも就業規則を見られるようにせねばならず(労働基準法 第106条1項)、その義務を怠った場合には法律の定めにより罰せられることがあります。



就業規則を変更する際に注意するべきポイント

最後に、就業規則を変更する際に注意するべきポイントを説明しておきましょう。ここまで説明してきたように就業規則変更の理由には、法律・政令の改正や企業合併、経営環境の変化がありますが、変更理由はどのようなものであれ、特に注意すべきは「不利益変更」です。

不利益変更とは?

不利益変更とは労働者に不利となる規則の変更のことで、給与の減額や手当の廃止、労働日数や休日の変更などが行われる場合を指します。
不利益変更は、就業規則変更の中でも労使の間で問題となることの多い変更です。ほとんどの場合は経営環境(企業を取り巻く社会環境の変化や法律・政令の変更)や経営状況の悪化(長期的な販売不振や赤字体質など)が原因となってこのような変更が行われることになるのですが、労働者にとってはすぐに納得できるものではありません。特に不利益変更の理由が経営に関するものであった場合には、労働者の責任ではなく経営者の責任となることがほとんどだからです。

ただし不利益変更は絶対にできないというものではありません。不利益変更を含む他の場合でも、規則の変更に大切なのは、その合理性です。その変更が外部環境の変化であれ自社都合であれ、時間をかけて丁寧に説明し、ときには代替となる条件を提示しながら、労使双方で合意できるようにしなければなりません。就業規則の変更は、労働基準監督署に就業規則(変更)届と、労使が合意した意見書を提出しなければならないからです。

変更後は周知徹底が大切

就業規則の変更に関して労使双方が合意し、労働基準監督署に就業規則(変更)届と意見書を提出できたとしても、その後の周知も慎重に行わねばなりません。特に不利益変更の場合は迅速に、変更点を分かりやすく記載して、内容を確実に従業員全員に伝える必要があります。

先述のように企業(使用者)は、従業員がいつでも就業規則を見られるようにせねばならず、その義務を怠った場合には法律の定めにより罰せられることもあります。また、就業規則を「確認できる場所に掲示」、「書面で交付」、「データで共有」のいずれかの方法で従業員に周知する義務も課せられています。「確認できる場所に掲示」や「書面で交付」は、紙で周知することを前提に定められた義務ですが、紙では改訂に関わる管理が難しく、事業所が多くある場合には新旧の就業規則が混在してしまうことが考えられます。また書面で従業員全員に配布した場合には、コストが毎回かかる他、情報漏えいの危険もあります。効率的に、そしてコストを低減して就業規則を見られるようにするならば「データで共有」する方法がおすすめです。

規程管理システム「DocLAN(ドックラン)」であれば、就業規則をデータで一元管理。変更点も分かりやすく表示できます。


規程管理システム「DocLAN(ドックラン)」でならば、以下のようなメリットがあります。

・規程の登録、改訂、廃棄を一元管理。バージョン管理も容易
・新旧差分表示機能があり改訂前と改訂後を容易に確認可能
・クラウドでシステム運用。いつでもどこからでも、在宅勤務中の従業員でも就業規程を閲覧可能
・高いセキュリティ性
・導入までの期間が短く、迅速な運用開始が可能
・優れた検索機能で目的の規程をすぐ探せる



まとめ:就業規則の変更は合意と周知徹底が大切

就業規則の変更で大切なことは、従業員と使用者での合意と変更後の周知徹底です。特に変更後の周知は、従業員全員が変更点について容易に、また確実に認識できるように工夫しなければなりません。変更の内容が不利益変更だった場合には、ちょっとした食い違いが従業員とのトラブルにつながりかねません。変更後の周知徹底を確実に行うためにも、規程管理システムの導入をご検討ください。


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社内インタビュー

2022.12.15

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