インタビュー・会談

【会談記事】どこにいるかわからない対象者へ重要情報を届けたい!リコール周知活動から見えたDMの可能性

ペーパーレス化という言葉が声高にうたわれる昨今ですが、紙にしかできないことはまだまだ世の中にあふれています。たとえば弊社が得意とする紙のダイレクトメール(以下、DM)は、届いたことがきっかけで周囲へ情報共有される、保管性や再読性が高いなどの特長があります。また、デジタルデバイド(情報格差)が課題となるシニア層へのアプローチが容易になることもDMの強みです。

弊社では、積水化学工業さまで過去に販売された介護用品のリコール情報を周知するDMの作成をサポート。年2回の送付タイミングに合わせて、毎回ブラッシュアップを重ねています。今回は、約10年のリコール周知活動から見えたDMの可能性について、積水化学工業の西村さまと、TOPPANエッジの飯田、鈴木で振り返りました。

ゲスト

積水化学工業株式会社
高機能プラスチックスカンパニー
技術・CS部 生産基盤グループ

西村 昭彦さん

インタビュアー

TOPPANエッジ株式会社

東日本営業統括本部
東京エリア第一営業本部
第三部 第一チーム
主任

飯田 俊介

ビジネスイノベーション本部
メディア販促部 第二チーム

鈴木 駿

※ 所属・役職、本事例の内容は執筆当時のものです。


ミッションは17万8,000台の回収!リコール対応は手探り状態からのスタート

積水化学工業株式会社 西村さん

西村さん:2013年に、積水化学工業が以前に製造したポータブルトイレで死亡事故が発生しました。2013年9月に行政から連絡を受け、同年10月から当該製品と新しい製品を無償で交換するリコール対応に乗り出し、現在も取り組みを続けています。

リコールの対象となるポータブルトイレの出荷数は17万8,000台。製造販売時期は約20年前の1996~2002年であり、かつ本事業は2006年に他社へ売却していたため、社内に残っているデータは不十分な状態でした。製造当時の状況を知る社員も少なく、手探り状態でのスタートでした。

飯田:御社は、こういったリコール対応はかつて経験されていたのですか?

西村さん:いいえ、不特定多数を対象とした製品のリコール対応は弊社でも初めてのことでした。社内にノウハウもなく、どこへDMを発送すれば良いかもわからない。最初は販売店のリストがあったので、透明の袋にA4の書類4枚を入れて送付したのですが、苦情も含めた連絡が多数来て、そこで販売店の協力を得にくいことを実感しました。

次に、販売対象と推測した全国の医療、介護施設宛てに約4万件の DMを送付しました。

TOPPANエッジ 飯田

飯田:その反響はいかがでしたか?

西村さん:最初は販売履歴に基づくリストが一部で入手できたこともあって、一定の反響はありましたね。近畿地方の病院で50台見つかったこともありました。その後はDMの回数を重ねるごとに反響は薄れていきました。

鈴木:DM発送の他にどのようなお取り組みをされていたのですか?

西村さん:初期の頃は、介護関連の各種団体にもお願いしてFAXでチラシを送ってもらう取り組みもしていましたね。しかし同じお願いを何度もするわけにはいかず、長続きはしませんでした。企画書のような堅い文章のチラシでは、リコールの案内だとわかりづらく、開封されずにゴミ箱行きになっているのだろうなという印象はありました。そこでTOPPANエッジさんへ相談して、本格的なDM制作の取り組みがスタートしました。

飯田:弊社と西村様とのお付き合いは約9年になりますね。営業担当も、私で3代目になります。

西村さん:もうそんなになりますか!

受け取った相手が「自分事」と捉えてくれるDMを目指し、試行錯誤の連続

西村さん:まずは、死亡事故が発生したリコール製品であることを周知するため、A4で8ページほどのDMを制作しました。以前は全7種類の製品を掲載していましたが、代表製品のみを大きく掲載してよりわかりやすくし、目立つ色味やキャッチコピーを含めて注意喚起を促すデザインにしました。

鈴木:DMを見た人に「ひょっとしたら、このリコール製品が自分たちの施設にあるかも?」と思ってもらえるよう、いろいろ考えましたね。

西村さん:ええ。そしてリコールを開始から数年後の回収実績の内訳は、介護施設が約6割、医療施設が約3割、個人が約1割でした。

鈴木:現在もそうですが、特に介護施設向けの取り組みには力を入れるようになりましたね。ただ文字情報で伝えるだけでは読んでもらえない。他のチラシと一緒に捨てられてしまわないよう、どうにか担当者の手に届けるために、さまざまな工夫を凝らしたDMをご提案させていただきました。

積水化学工業株式会社 西村さん

西村さん:デザイン面も重要ポイントを中に掲載したり、外に出してみたり、いろいろやりましたね。他の郵便物に混ざらないよう、あえて正方形にしたり、組み立て式のPOPに展開できるパターンなども制作したり、手に取ってもらえるような工夫を考えました。

色使いも、本当は毎回赤や黄色の警戒色で目立たせたいところなのですが、このDMは継続して送ることに意味があるので、毎回色味の強すぎるDMだと敬遠されかねない。だから色合いや紙の色などにも配慮をしています。

飯田:デザイン面では弊社の「ヒューリスティック評価」も行っています。ご提案内容としては、専門家の観点からの見やすさ、視線の動き、配色、文字数のボリュームなどになります。

西村さん:TOPPANエッジさんにいろいろ教えていただいたおかげで、弊社内にもかなりノウハウが蓄積されてきました。その効果もあってか、最近はヒューリスティック評価で致命的なご指摘をいただくことは少なくなったように思います。でも、デザイン決めは毎回難航しますね。

飯田:はい。ああでもない、こうでもないと頭を悩ませることも多いですね。デザインは4校、5校になるのはしばしばで、先日は7校までいきましたね。デザインもそうですし、形態も毎回ブラッシュアップしています。

西村さん:受け取った相手の興味を引くため、DMはマンネリにならないようにしたいと考えています。ですから、TOPPANエッジさんにはずっと「DMがそのままゴミ箱に行かない工夫をしてください!」というお願いをしていますよね。届いたDMに興味を持ってもらい、開いていただかないことには次のステップに進みませんから。

TOPPANエッジ 鈴木

鈴木:DMのプロとして、これまでの経験やノウハウを総動員してご提案しております。

既存のモデル同士を組み合わせて新たな形態を作り出すなど、かなり試行錯誤を重ねてきました。

西村さん:デザイン面での創意工夫だけでなく、DMにはリコールの問い合わせ窓口であるコールセンターからの要望も取り入れました。「お客様がDMのどの部分を見ているのかわかるよう、ページ数を入れてほしい」「理解しやすいように説明の並び順を変えてはどうか」など、現場の生の声を入れて改善しています。

医療・介護業界で効果が期待できるDMをベースに、内容をブラッシュアップし続ける

西村さん:DMそのものもですが、宛先を「施設安全管理担当」にしたほうが担当者の手元に届きやすいなど工夫しました。TOPPANエッジさんからのポスター入りDMというアイデアは画期的でした。

TOPPANエッジ 飯田

飯田:そうですね。
DMを施設の担当者に送るだけではなくて、そこから施設の利用者にも周知してもらえるようなものをと考え、施設で掲示できるA3ポスターDMをご提案しました。

西村さん:入所施設の場合、施設が買いそろえるだけではなくて、利用者が個人で居室にポータブルトイレを持ち込むケースもあるんです。そのため、利用者の目に留まる場所にポスターを掲示するのは良いアイデアだと思いました。もうひとつは、2022年からスタートした都道府県単位のDMですね。

都道府県別のメッセージ

鈴木:はい、リコールの取り組みもある程度の実績が出てきましたので、送付先のセグメント分けをご提案しました。送付する都道府県別に、表紙に「この県ではこれまでに〇台発見されました」というメッセージと回収状況のグラフを示して、より身近に自分事として捉えてもらうようにと打ち出しました。

このDMはかなり反響があり、19回目のDMでしたが全国で100台見つかるという成果を上げたんですよね。

西村さん:あれは手ごたえを感じましたね!リコール対応を始めて約10年経ちますが、まだこれほどの台数が見つかるということは、リコール製品だと気付かずに使い続けている施設・個人がまだ一部で残っているという想定はしています。

飯田:DMと並行して、2015年の秋からは全国の自治体広報誌に広告を出稿し、個人宅向けへのアプローチを始めたと伺っています。こちらは現在までに約1,500台の回収を実現されたとか。

西村さん:2013年からリコールを開始して、現段階での回収率は約20%です。最初にご説明したように販売先のリストが不十分だったこと、そして約20年前に製造された製品のため、購入者も存在を忘れていたり、あるいは購入者でない方が利用していたりという可能性もあります。ですから施設にはDM、個人宅には自治体の広報誌という取り組みは続けていきたいですね。

自分たちの製品に責任を持つ企業であり、リコールへ真摯に取り組んでいる姿勢を周知できる機会だとも考えています。

飯田:医療・介護施設の特性上、DMの効果は大きいと感じています。介護施設などの現場では、とにかく忙しくて休憩時間もわずかだと聞きます。そんな中でわざわざDMからWebサイトを見にいかないだろうということで、やはり情報を伝えるという点ではDMをベースにするのが最善だという見解です。個人向けでも、利用者の年齢を考慮すると紙媒体がベストだと考えています。

西村さん:そうですよね。当初、この製品で死亡事故が起きたことをなかなか信じてもらえないケースが多くありました。使い方によっては大きな事故につながることもあるのだと、自分事に感じてもらうための周知につながっていると感じます。

QRコードの活用や紙ファイルなど、新たな取り組みを模索中

西村さん:DMを打てば少なからず反響が返ってくるという現状もあり、この取り組みを止めることはできないと考えています。しばらくはDM発送を続けていくので、今後ともどうぞよろしくお願いします! それから、QRコードも反響が増えているので、アップデートしていきたいですね。

鈴木:そうですね、DMを見た方からお電話でご連絡いただくのがメインでしたが、最近はQRコードからの流入も増えていますし、弊社の独自調査(参考:ダイレクトメールに関する2022年調査結果)の結果も参考にしながら、高齢者向けにQRコードを大きくしたり、自分事化するための注意書きを入れたりと工夫を重ねてアップデートを続けていきたいと考えています。

ちなみに今温めているアイデアに、「紙ファイル」にリコール内容を印刷して、そのファイルを現場で使ってもらうというのがあるのですが…。

西村さん:それは良いアイデアですね!POPやポスターのように、人の目に触れる機会を生み出す形態はリコール周知にピッタリだと思います。

飯田:積水化学工業さまのお取り組みに合わせて、最適な製品やサービスをご提案できるよう、今後も引き続き尽力してまいります!本日はありがとうございました。

※ 所属・役職、本事例の内容は執筆当時のものです。
※ 写真撮影時にマスクを外していただきました。
※ QRコードは、株式会社デンソーウェーブの登録商標です。

2023.04.24

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